[ 神宮律子のエッセイ ]
先日、NHKの人間ドキュメント「もう一つのワールドカップ」を見ました。今年のW杯の審判に選ばれたある日本人審判についての特集でしたが、その時に、選手にイエローカードやレッドカードを出す際に、「フェイスコントロール」つまり「表情を使い分けしている」という話がありました。
試合中は、反則を見つけるのではなく、いかに良い試合になるかという事を考え、常に進化し続けているこの審判は、自分にはまだ何かが足りないと考え、「フェイスコントロール」の必要性を見いだしました。
その審判が担当した試合の様子が、テレビ画面に映し出されていましたが、実に見事な表情の変化でした。何を言っているのか聞こえなくても、その審判の表情を見ているだけで、反則の重さや、選手の気持ちや伝わってくるようでした。
この審判は、反則の内容そのものだけではなく、反則を与える選手の性格や状態により、厳しい表情で警告している事もあれば、笑顔で警告することもあるというように、相手によって表情を使い分けているということでしたが、審判がそこまでするのかと驚きました。やはり、その道を極める人は、皆と同じ事をしていてはダメなのだと感じると同時に、この「フェイスコントロール」に興味を覚えました。
普段笑顔を意識はしても、真剣な表情には、あまり意識をしていないような気がしました。「人は言葉よりも表情」を信じると言われます。相手が真剣であるかどうかは、言葉プラス口調、そして表情が伴って初めて伝わります。そして、表情の落差が大きければ大きいほど、相手に伝える時のインパクトは強いと感じます。そして、叱る時だけではなく、謝罪の気持ちを伝える時の表情も大切です。
以前接客業をしている時に、クレームを受けた際に「顔が笑っている」と、お客様から叱られたことがあります。正直、その時の私は、「理不尽な事を言うお客様だな~」という気持ちがあり、クレームの内容を素直に聞こうとしていなかったのだと思います。お客様には、そんな私の心の中は、お見通しだったようです。
この出来事があってから、いつも笑顔だけ意識するのではなく、真剣に相手の話を聞いたり、お詫びしたり、そして叱る時は、表情も伴わなければ、相手にきちんと伝わらないものだと実感し、意識するようになりました。
笑顔と真剣な顔の落差が大きければ大きいほど、相手に対するインパクトが強いといえます。ただ真剣な表情の時でも、口角だけは下がらないように、真一文字の口元で、目元の表情でコントロールしたいものです。口角が下がると、叱っているというよりも、怒っていると思われ、感情的な人と思われかねません。
そして、「フェイスコントロール」をすることで、ついつい感情的になりそうな時には、理性が働くのではないかと考えます。常に鏡で自分の表情を見ることができないので、相手の表情をバロメーターに意識したいものです。




