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会釈

[ 神宮律子のエッセイ ]

 研修などで企業を訪れるときに、「この会社は良い会社だな」と感じる要素の一つに「会釈」があります。廊下ですれ違った時やエレベーターの乗り降りの際に、たとえ声に出しての挨拶がなくても、会釈があると「この会社は社員教育が行き届いた良い会社だな」と感じます。

 反対に、会釈がないと「無視されている」「顧客指向がない会社」という印象を受けます。
 そもそも「会釈」とは何かと言いますと、「人に対する親しみや・好意・敬意などを表すために軽く頭を下げること」です。知らない人に対しても人としての敬意は示したいものです。

 お辞儀には3種類あり、TPOに応じて会釈、中礼、最敬礼と呼ばれています。その中で会釈は、頭を下げる角度はおよそ15度。あまり深すぎると相手に対して負担感を与えます。人は相手が丁寧なお辞儀をすると、つられて丁寧なお辞儀をしてしまうことがあります。相手に負担感を与えず、しかも敬意を示すには15度位の角度のちょうど良いといえます。

 日常生活の中でも、自然な会釈をする人を見かけると「素敵な人」という印象を受けます。比較的年配の方は、バスの車内などで空いている席に座るとき、隣の人に会釈をして座る方が多いように感じます。

 ところが、先日、電車内で女子高校生が会釈をして座ったのには少し驚きました。その日は電車が満員であったにも関わらず、空席の前に立った人がなかなか座らず、かといって、私の場所からは遠いしと、その空席が少し気になっていました。すると空席の斜め前に立っていた女子高校生が、なかなか座らない人に会釈をしてその空席に座りました。何気ない光景でしたが、黙って座る人が多い中で、若いのに偉いなと感じたできごとでした。

 また、私は時々高校生対象に就職や進学のための面接対策講座を担当することがあります。ある高校の講座で、椅子に腰掛ける際に「失礼します」と声に出した後に会釈をして座った時も感心しました。先生から教わったのでしょうが、教わってもついつい椅子があるとすぐに座りたくなるものです。この高校では、椅子に座る際には会釈をして座ることが身についているという事が感じられました。年を重ねた人にとっては、会釈が身についているのはあたりまえかもしれませんが、若い人に会釈が身についていると感動します。

 ところが、大人でも会釈ひとつできない人が最近は多くなったと感じます。例えば、自転車に乗っている人に道を譲った際に、会釈がなく、歩いている人が道をゆずるのはあたりまえ、と言わんばかりで通りすぎて行きます。また、先日観劇に行った際に、隣の人が、私の前を無理やり通って出ていった時には驚きました。まるで自分自身が物か何かのような存在で、人として扱われていないような気分になりました。

 知らない人に対しても自然に会釈ができるようになれば、きっと気持ちの良い社会になるでしょう。ただ、ペコペコする会釈はかえって卑屈に見え格好悪いものです。量より質で丁寧に会釈して上品な印象を与えましょう。


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