[ 大嶋友秀のエッセイ ]
あと2週間で、2005年が終わろうとしています。昨年から考えると飛躍的にお仕事がふえ、たくさんの人との出会いがあり、事業がひろがりました。これも、皆様方のご理解、ご支援のおかげでございます。まず、冒頭に御礼を申し上げます。
さて、今年最後の巻頭エッセイのテーマは「本」です。今年もいろいろな本を読みました。面白かった本、思わず涙ぐみながら読んだ本、素直に感動した本、ためになった本。もちろん、いまひとつ満足できなかった本もありました。そんな中から、ビジネスのためになると思った本を3冊紹介します。
1.「日本語トーク術」斎藤孝、古館伊知郎 小学館文庫
最初に、斎藤孝さんと古館伊知郎さんの対談本です。斎藤孝さんは、「声に出して読みたい日本語」など数多くの日本語やコミュニケーションに関する著作が多い方です。優男に見えますが硬派なところがあるようです。つねに言葉と躯(からだ)の関係が考えの中心にある斎藤氏の主張には、いつもそのとおりだと説得されてしまいます。
古館伊知郎さんは、おどろくほどの比喩のユニークさとたくみさで、アナウンサーとしても群を抜いている方です。今の「報道ステーション」のメインキャスターをつとめる、まさに話し言葉の達人といえるでしょう。
このお二人の対談をとおして、言葉をあつかう「プロ」のこだわりを知ることができます。一見どうでもいいように思える些細なことを大切にするのが大事と思い知らされた本です。
テーマは、脳と言葉、日本語の「技」、コミュニケーション力、質問力、日本語の達人たちのエピソードなど、興味深いものばかりです。このお二人のぶっ続け9時間にもわたりおこなわれた「言葉の格闘技」を読んでみるのも面白いですよ。
2.「ひとつ上のプレゼン」眞木準編 インプレス
「プレゼンテーション」を解説している本はたくさんありますが、これまでの本とは違っています。プレゼンが頻繁に要求される広告業界の中で、つねに勝ち組のクリーエーターたちが語っている本だからです。それだけに関心があるのは、どうすればいつも勝てるのか。何にこだわり、プレゼンにあたっているのか。そんな彼らの秘訣が満載の虎の巻なのです。
私が驚いたのは、ほとんどの人が、プレゼンの原稿を作らないことです。でも、これは準備をしていないのではなく、むしろ、準備をこれ以上できないぐらいしたために、原稿なしで、企画内容を語ることができるからでした。
また、百戦錬磨のプレゼンの達人だからこそ、原稿を作るとかえって縛られてしまう怖さを知っているのかもしれません。何よりも、作ると覚えようとします。覚えると、間違いなく忘れるものだからです。
だから、プレゼン内容は、覚えてはいけない。覚えると自分の言葉で考えを話せなくなるから。そういうことを考えさせてくれる本です。
3.「思考力と対人力」船川淳志 日経ビジネス文庫
この本は、まるで脳にとっての乳酸菌飲料のように栄養価が高いものです。仕事をしていく上で、必要な基本スキル、「思考力と対人力」をやさしく、それでいて十分深いレベルまで解説がなされています。
随所に入っている図解のためにむずかしいところも簡単にわかります。読み手にとってとても優しく配慮されています。たくさんのビジネス啓発書はありますが、この一冊で、「2度おいしい」以上の効果が期待できます。
一流のビジネススクールで、思考力をどう鍛えているか。また、対人力をどう鍛えているか。そして、まとめの章では、「思考力と対人力の総合スキル」としてのこれからは、ファシリテーションスキルが必須であると説いています。それがまた説得力があるわけです。
ビジネス書にしぼって、3冊の本を紹介してみました。私の今年の読書記録をながめてみて発見したのは、仕事に関わりのあるビジネス書が多かったです。来年は文芸ものもたくさん読みたいと思っています。それは、ビジネス書はマインドにプロテインをあたえてくれ、文芸書は、ハートにうるおいをあたえてくれるように思えますから。
最後に、みなさまにもうひとこと申し上げます。今年もいろいろとありましたが、良い年末、そして新年をお迎えください。そして、来年もより多くの人たちに、スピーキングエッセイを知っていただき、話すということを通じて、より多くかたが幸せになれるように、力を尽くしていく所存でございますので、よろしくお願い申し上げます。




