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初期不良

[ 大嶋友秀のエッセイ ]

 理由はわからないのですが、私は、電化製品との相性がよくないようです。これまで9台パソコンを買ったのですが、4台はどこか壊れていました。「初期不良」といわれる状態です。「初期不良」の製品は、そんなに多くないと思うのですが、なぜだか、遭遇してしまうのです。

 先日、お風呂の中でも楽しめるCDプレーヤーを買いました。ところが、電源を入れてスイッチをいれても動かないのです。乾電池だと問題なく動きました。またしても嫌な予感がしました。これは、「初期不良」ではないかと…。

 しかし、「おかしいな」と思ってもまずは確認をしなければなりません。それは、自分の操作が間違っているかもしれないからです。

 まず、注意深く、「取扱い説明書」を読みます。これが意外に面倒で時間がかかります。最初のページから最後まで目を通します。「故障だと思う前に」というページには、「コンセントが抜けていませんか」という初歩的なことから書いてあります。どうやら、すぐに確かめないで、苦情を言ってくる人が多いことがわかります。そんなくだりを読むとよけいに、私が間違っているのではないか、と思ってしまい、何度も繰り返して「説明書」を読みます。そして、やっぱり、「私は間違っていない」、「製品に問題がある」と確信して、販売店に製品の交換を求めに行くことになります。

 しかし、その店に行ったのですが、そのプレーヤーを買ったときの店員さんを見つけられませんでした。そのために、初めて会う店員さんに事情を説明しました。彼は、無愛想で、面倒くさそうに対応していました。「初期不良」の製品の対応は、通常ありませんから、相手は、疑いを持ち、用心深くなっていたのでしょう。そして、面倒くさかったに違いありません。なぜならば、十分確認を行なわなければ、簡単に製品の交換には応じることができないでしょうから。

 その店員さんが確認作業を行います。これまでの経験では、家で動かないのに、お店ではしっかりと動くことがあります。私は、心の中で、「動かないでくれよ!」なんて、どきどきしながら呟いていました。今回は、しっかりと動きませんでした。

 しかし、相手はいろいろと試します。本体のチェック、アダプターのチェック、他の電源ではどうかというチェックなどをひとつひとつ確認をしていきます。こちらも家で、さんざん時間をかけて行なってきている作業をお店でやはり念入りに繰り返すのです。その作業を眺めながら、担当者が納得してくれるまで、辛抱強く待つのです…

 この出来事のおかげで、ひとつ発見がありました。それは、その苦情対応をしてくれた店員さんの「顔が見えた」ことでした。はじめは、愛想がない仏頂面に見えた表情が、確認の作業を試すたびに、「あれ?」、「やっぱり動かない!」という反応が表情に現れてきて、愛嬌のある顔に変わっていきました。私も長く待たされたのですが、腹を立てることはありませんでした。

店員さんは、汗をかきかき対応してくれていました。とにかく、一所懸命のようでした。そして、「お待たせして申し訳ないですねえ!」と、時折、声をかけてくれるのです。私は、知らない間に、店員さんになにかしらの好感さえ持っていたのでした。これは、いつもなら、店員さんを、自分に関わりのある人だと思えないのですが、その苦情という「事件」を通じて、血の通った人がいることを感じることができたからです。

 初期不良の製品を買ったことはアンラッキーでした。しかし、そのために、店員さんの「顔」が見えたのは、とてもラッキーなことでした。もちろん、不良品をつかまないほうがいいでしょう。それでも、あなたが不良品を手に入れたときに、イライラしたり、不快な思いを募らすのではなく、その状況を楽しむぐらいの余裕を持っていると何かうれしくなるものを発見するかもしれません。

 今、我が家のお風呂には、交換された色の違うCDプレーヤーがあります。湯船につかりながら、静かに流れ出てくる音楽に身を浸し、毎日の疲れを癒しています。そして、そのプレーヤーを買ったときにあった、ちょっとした「初期不良」のエピソードのことなんかもすっかり忘れているのです…。


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